東京新聞がTokyo web で「農業者が長寿」の記事を載せてくれました。

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農業者は元気に長生き
2017年8月30日
農村部を歩くと、農作業に励む元気なお年寄りに多く出会う。農作業をしているから元気なのか、元気なお年寄りだけが農作業をしているのか-。この疑問に、農業経済系の研究者が農業者世帯などへのアンケートからある答えを導き出した。やはり、農業者には、病気知らずで長寿を全うする「ピンピンコロリ」の傾向がみられるという。 (白鳥龍也)

自慢の水田の手入れに訪れた山浦昭和さん=長野県小諸市で 写真
◆入院経験ゼロも多数 早稲田大研究

 研究をまとめたのは、早稲田大政治経済学術院の堀口健治名誉教授と同大社会科学総合学術院の弦間(げんま)正彦教授。医療費削減の方策を探る目的で、農村部と住宅街が混在する埼玉県本庄市で、農業者とそれ以外の人を比較することにした。
 農業者に関しては今年二月、農協の協力で組合員約三千九百世帯に調査票を配布。それ以外は三月、JR本庄駅周辺の住宅街の千九百世帯に同じ調査票を配った。有効回答は計約八百四十世帯分(うち農業者約五百四十世帯)。
 アンケートでは一九八九年以降に亡くなった家族がいる場合(1)死亡年齢(2)生前の仕事と就労年数(3)引退年齢-などを質問。その結果、専業に近い形で農業をしていた男性の平均死亡年齢は約八十二歳、女性は約八十四歳で、それ以外より男性は約八年、女性で約二年長かった。引退年齢は男性が約七十四歳、女性が約七十三歳。男女ともそれ以外の人より約十年遅く、約五十年間働いたことになる。
 引退から死亡までの年数は、農業者の男性は約八年、女性は約十一年で、それ以外の人と比べて男性は約二年、女性が約八年短かった。死因も、農業者はそれ以外よりも老衰の割合が高かった。
 このほか、調査では六十五歳以上で農業をしている人には入院の経験がない人が多いことが判明。堀口名誉教授と弦間教授は「農業者には健康寿命(制限なく日常生活が送れる年齢)が長い特徴が出ている」と分析する。個人データにより、農業と長寿の関係を検証した研究は「他に例がないのでは」という。

「長寿の里」佐久地方のほぼ中心にある「ぴんころ地蔵」=長野県佐久市で 写真
◆長寿願う観光客、続々 長野・佐久「ぴんころ地蔵」
 「寝たきりになりませんように」。白煙たなびく浅間山の南麓、長野県佐久市にある通称「ぴんころ地蔵」(正式名称は長寿地蔵尊)。観光バスなどでひっきりなしにやって来る参拝客が手を合わせたり、愛らしい顔をなでたりしている。
 佐久地方は、男女とも長寿日本一の長野県でも、平均寿命が長い。地蔵は、地元商店街が建立した長寿の里のシンボルだ。
 「忙しくて、病気になっている暇なんてなかったなあ」。佐久地方の一角、小諸市で六十六年間農業に携わる山浦昭和(あきかず)さん(84)は、血色のいい顔をほころばせた。三代続く専業農家の長男で、今でも水田とジャガイモ畑など約一ヘクタールをほぼ一人で切り盛りする。病気らしい病気は、三十代でなった盲腸炎くらい。
 「好き嫌いなく食べ、日の出から日没まで夢中で働いた。酒はそこそこ。農地改良など、ムラ活性化のための仕事も率先してやってきた」。健康のこつと問われても特になく「気が付いたらこの年ですよ」。
 農業と健康の関連について、佐久市立国保浅間総合病院の箕輪隆副院長(58)は「農業は中程度のスポーツを続けるのと同じ。水と空気が澄んだ農村で、新鮮な野菜や果物を食べられる影響も大きい」と話す。

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