4月28日午後、ソーラーシェアリングサミットで政策の上での意義を強調しました。

20分でしたが、パワポを14-15枚くらい使い、報告しました。会を主催している馬上氏、小山田氏のそれぞれの経営の特長も紹介できました。
大事な点は、ソーラーシェアリングの下で、農業が一段と伸びていることです。富士宮市のカネヘイファームがその典型で、ソーラーがあることで玉露になり、さらに輸出が伸びるはずの抹茶も作れる。煎茶需要の劇落に対して、抹茶は需要急増です。ソーラーに期待したい。次いで群馬のファームドウを紹介し、イチゴをはじめ施設園芸をさらに広げることを予定しておられるが、このハウスの南面上にびっしりとパネルが貼ってある。この収入が、施設園芸の投資を助け、経営にとって、収入の安定化に貢献している。また、小山田氏のすべてのソーラー、すべて放棄地の利用ということにも注目。最近は放棄地の地主から、借りてほしいという要請が多いとのこと。
翌日の日本農業新聞は、これ等のソーラーシェアリングには23年度の固定買取10円では合わず、経産省が24年に工場の屋根置き用に12円を新設するという。それなら、屋根なら梯子をかけるのでコストアップを考慮というが、もっとコストがかかるソーラーシェアリングの買取を新設せよ、ここが新聞には取り上げられていました。20230502日本農業新聞20230429_3面

4月25日友人の金谷氏と久しぶりに群馬のファームドゥを訪問、ソーラーシェアリングについて岩井社長のお話、お聞きできました。

ソーラーシェアリング、その世界では知らない人はいない先駆者であり、また実践家でもあります。海外にもモンゴルをはじめ普及に力を入れておられる。高崎市の中里を主に、計17haの面積でソーラーファームを展開しておられ、農業は農地所有適格法人ファームクラブが担う。多くの若者が働き、そして農福連携にも力を入れている。訪問当日は11人の新入社員の研修会でした。若々しいですね。
その後、施設園芸を主に、コーヒーやキュウリ等を見学。さらにはこれから展開する上細井の8.4haの新規取得の農地に、いちご11棟、トマト4棟、その他等、施設園芸を主にソーラーで取り組まれる。その場合、構想として、施設はファームドゥが設置・提供し、それを受ける若者が経営する仕組みをスキームとして展開するという。
ソーラーシェアリングは、経常利益は電力が圧倒的で、農業はしっかりしているが経常利益としては十分な成果が出ない。農業は栽培はよくできているものの、収益性がなかなか成果が出ないことが多い。ここを経営が任される若者の力で突破してもらいたい。
写真は、コーヒーやキュウリだが、結構、太陽光パネルが多く載っている。また、ハンドルでテーブルを動かすことで、通路面積を少なくする工夫には感心した。


「農業者は長寿で元気」のテーマを堀口は実証していますが、学会誌に載っていないとの間違った批判があります。

批判するのであれば、論文を実際に見て発言してもらいたいものです。SNSでそうした批判がなされていることを友人が教えてくれましたが、すべてこれに関する堀口の論証は査読がない雑誌のみで、学会誌に載っていないという批判です。中身よりもそれが問題らしい。堀口は査読がなくても、しっかり編集機能がある雑誌であれば、問題は無いと思いますが・・・
2019年9月17日発行の共生社会システム学会『共生社会システム研究』 Vol.13,No.1 に、堀口・弦間・軍司の共著で「後期高齢者医療費が少ないグループの検出とその意義ー埼玉県本庄市の自営農業者グループを対象とした実証ー」があります。査読のある学会誌です。

後期高齢者である農業者の年平均医療費が「その他の人」の医療費と比べ、格段に少ない、という堀口の指摘は、「その他」の中に入院したりしている人などをすべて含めるので、それは当然ではないか、という批判があります。
その点について、論文中の表2で、前年は農業に従事していた人が翌年はどうか、その中には体を壊したりして入院したりする人が、その年に出てくるので、年間の平均医療費が増加しています。2014年のこの数字は極めて大事です。農業者も当然離農したりするほどに体を壊したりする人が出てくるので、平均医療費が上がるのです。その意味で、「その他の人」と同じ状況です。なおその他の人は、毎年元気な75歳の人が加わってくるので、また亡くなる方もあって、平均医療費は90万円前後で一定です。農業者の2014年は73万円なので、その他の人と比べて、医療費が少ないのですね。
ということは、農業者も、体がもたずに農業をやめ、入院する人もいるので、平均医療費が上がります。しかしその程度が、その他の人のそれよりも低いのですね。農業者は長寿で元気、という意味は、そのことも含み、いわゆる「ピンピンコロリ」の状況を示し、健康寿命がその他の人よりも長いことが実証されているのです。

その学会誌を図書館等で読んでいただきたいと思います。この学会誌は『日本型アニマルウェルフェアの展開を目指して』のタイトルの本の形式の中に載っています。農林統計協会の出版で、この本を購入いただくのが早いかもしれません。

この研究はその後も継続していますので、さらに多くの方に容易に読める形で提供したいと思います。堀口

4月28日の金曜午後にソーラーシェアリングのシンポが開かれます。ご参加ください。

事前にお知らせするのは今まであまりしておりませんでしたが、これからは大事な情報、積極的にアナウンスしたいと思います。

【◇4/28、東京でソーラーシェアリングサミット2023開催♪ 】

2013年3月末に農林水産省が営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関する通知を発出して、10年が経ちました。食料とエネルギーを農地で共に生産するソーラーシェアリングの価値は、日本だけでなく世界各国で研究開発や技術実証が進められており、人類共通の価値観として受け入れられつつあります。次の10年のソーラーシェアリングが社会にどのような貢献を果たしていくのか、またその普及に向けてどんな課題があるのか、様々な立場の有識者を交えて幅広く議論する「ソーラーシェアリングサミット2023」が東京・千代田区の会場で開催されます。

詳細は下記URLを参照ください。
https://agrivoltaics-summit-2023.peatix.com/

-共同代表理事 馬上 丈司(千葉エコ・エネルギー)-

再エネの第3回の水資源、第4回の畜産バイオマスの記事を載せます。日本農業新聞23日、24日です。

水資源は、小水力発電、そして意外に忘れられているため池の太陽光発電、を紹介しました。

畜産バイオマス、ようやく糞尿を利用しての発電、展開してきているが、並行して出てくる消化液、その内容は貴重な肥料になるのに、使わずに河川等に流している。もったいない。濃縮化、固形化、の技術が進んできているので、大量に出てくる消化液を地域で有効に使ってもらいたい。そのためにはサービス会社等、仕組みが必要。
また小規模の畜産ではメタンガスによる熱利用の仕方もあることを紹介した。バイオマス発電のみが有効利用でもない。

日本農業新聞での農業・農村での再エネ連載、今回は4回目の3月24日で終了です。

木質バイオマスは今回外しました。日本農業新聞の25日の論説は、「発電用の木質燃料、安定供給へ体制を築け」、そうなんですね。
管理できていない、だから利用もされていない日本の膨大な森林資源、そして足りないからヤシ殻などを大量に輸入している。
ならば、日本自身で、主伐・植林・下刈り、この仕組みをどう構築するか、これに応えないと、安定供給体制にならない。ここが堀口にはまだわからないので、今回は外した次第。急いで研究・調査します。
21日、22日の第1回、第2回の記事、カラーで写真がはっきりわかるように、記事を載せておきます。
記事では、太陽光、今までの林地や農地転用で面積を稼いできたのだが、農地は自給率をあげるためにはこれ以上の減少は避け、そのためにもソーラーシェアリングを大いに強調しました。しかし、今も荒廃農地が多く発生し、その面積は大きいので、今回もそこに目を付けている事業者が多い。そして、それは「再エネ」なので、オフサイトで再エネが欲しい企業に売る戦略が動いているように思われます。まだ調査していませんが・・・

3月19日の日本農業経済学会で「日本農業における外国人材の受け入れの現状と課題」で座長を務めました。

アジア農業経済学会との共催だったので、多くのセッションがあり、我々のは正式な学会シンポなのですが、2時間の短さでした。しかしこの大事なテーマがようやく農経学会のシンポテーマになったことを喜びたいと思います。
青山学院大学の立派な本多記念国際会議場で開かれ、堀口は座長としての解題、カンボジア・シプロ社の相談役・和泉さんが送り出し機関の役割、北海学園大の宮入さんが北海道を事例に外国人労働者の農業での受け入れ実態、札幌エージェントの土居さんが派遣形態による外国人のホームヘルパー、計4人の報告を1時間強で終え、その後は活発な質疑を受けて議論しました。これが論文で学会誌に載るのは半年後でしょうから大分先になりますが、いろいろな形でその内容を雑誌等で先に読めるように努力したいと思います。
堀口が使った図表で、下記の図は日本人の49歳以下の新規就農者数の推移です。直近では新規に雇用就農した数が8500人であり、今まで最大を占めていた新規自営農業就農者(自家に家族として就農)がそれを初めて下回ったことが話題になりましたが、それでもまだまだ新規就農者の数は少ないですよね。
それに対して、2枚目の図は農業に従事する外国人の数です。直近は2022年10月末の数字ですが、構成がまだわからないので、計の43600人のみわかるのですが、図に載せていません。しかし図の2021年のそれと比べると1年間でちょうど5千人の増加です。雇われ日本人の増加が8500人でしたから、これに5千人という数(この外国人は雇われでしかも若手ですからおなじ対象です)は貴重です。新規に人を雇いたい農家・法人は、その3分の1は外国人に依存しているということになります。
コロナ以前の4年間は、毎年の外国人の増加量が4千人なのですね。コロナあとが5千人、多分、これからさらに増えるでしょう。この日本農業を強化する、数少ない要因の、大事なひとつである外国人、これを注目しておく必要があると思われます。

20230320新規就農者数

20230319農業従事外国人人数

小田原市の「小田原かなごてファーム」のソーラーシェアリングを見学に行ってきました。

代表の小山田さんが自ら案内してくれて、5機までできたソーラーシェアリング、そのうち3号機、2号機、そして最近発電の5号機を駆け足で見てきました。
うち、2号機は2018年立ち上がったのですが、その年の台風で完全に倒れ、これを支え棒やチェーンを付けて、新たに立ち上がったものが写真に載っています。
いろいろな苦労がありますが、5号機はオフサイトで供給し、このファームでは最初のオフサイトの3号機を踏まえ、本格的なものでした。
これらの中身は小山田さんの著書『食エネ自給のまちづくり』田園都市出版、2022年に詳細に載っています。彼のソーラーシェアリングはすべて耕作放棄地を農地に復活させ、太陽光も農業も、という趣旨を実現していることがよくわかりました。最近は放棄地の地主さんから進出要請が来ているとのこと。
地元に貢献していることがうれしいですね。

2月27日に匝瑳(そうさ)市、3月3日に富士宮市にソーラーシェアリングを見に行きました。

匝瑳市は市民エネルギーちばの拠点であり、代表の東さんなど、皆さんが同行して色々勉強させてくれました。富士宮市は、カネヘイファームの後藤さんが、堀口と全農の日高さんに、茶園のソーラーシェアリング、これにシャインマスカットの成果も含めて、説明してくれました。写真を含め、後程、ソーラーシェアリングの重要さを説明したいと思います。

匝瑳市のソーラーシェアリング、大変印象的でしたが、ここでは、パタゴニア社の支援のソーラーシェアリング、大麦ですが、立派なものです。機会をとらえて、その仕組みを紹介したいと思います。2枚の写真はその一つです。

富士宮は茶園のソーラーシェアリング、の写真です。ソーラーシェアリングの下の茶は、寒冷紗などもかけますが、玉露の位置づけになります。

日本農業新聞に四国の農家の人々にカンボジアに同行した記事を書きました。

現地での3倍の応募者からどのように選抜し、翌日は採用が決まった農家を訪問して、両親や兄弟らと話し合う様子をフォローしました。そのほかにも来日前の日本語の勉強の仕方なども拝見しました。双方ともに熱心ですね。ただ記事の分量が大きく、ここに掲載できません。2023年1月23日の月曜に乗せた初回の記事のワード版を載せます。写真も略です。
1月3日、2月6日の月曜の、2回目、3回目は日本農業新聞をご覧ください。

記事の元原稿です。
技能実習生選考に向かう農家のカンボジア同行記    早稲田大学名誉教授・堀口健治

1. カンボジア・プノンペン大学内で行われた集団面接
 2022年12月18日に行われた選考は翌年の23年8月に日本へ来る実習生の選抜である。08年設立の受け入れ監理団体ファーマーズ協同組合(近藤隆代表)は香川と徳島の大規模な農家・法人46事業体が構成する事業協同組合だが、年4回募集のうち、今回受け入れる事業体は7、うち二人を希望する所が三つあり、計10人の実習生をこの日に決めることになる。カンボジアの送り出し団体はアグリファーマーズカンボジア(14年設立)で、ファーマーズ協同組合等からも出資を受け、これらの農家・法人のために主として活動している。ファーマーズ協同組合はカンボジア、ラオスを主に技能実習生を受け入れており、さらに登録支援機関として特定技能も受け入れている。
 カンボジア各地から集まった応募者31名は緊張していたが、最初に、簡単な「足し引き」・乗除の計算、次にIQテスト、写真のバーベル持ち上げ、そして豆をピンセットで別の皿に移す作業(左利きがわかる)を時間内でこなした。そしてすぐに集計され、面接に役立てられていた。説明はすべてアグリファーマーズカンボジアだが、農家による面接の質疑も彼らが通訳した。これらの方式は従来からのやり方であり、その後は数人ずつに分かれての面接で、他のものは外で待つ。
 しかし面接用資料の詳細さには驚かされた。学歴・年齢・未婚を含む婚歴・住所・身長体重・今の職業・家族全員の年齢と仕事が載っている。また全員が農家出身であることもわかる。大事なのは応募の事情で、ファーマーズ協同組合に雇われ帰国した者からの推薦が極めて多い。だから日本ではどのような仕事か、所得や生活等の情報を得たうえで応募しており、ブローカーを介しての応募は無い。事前に募集情報が帰国者に伝えられ、彼らの兄弟親戚、友人、村人に伝わる仕組みなのである。
 農家が採用したい実習生の条件はカンボジアに来た代表と4戸の農家に伝えられていて、事情で欠席した三つの事業体のためにも選抜することになる。男2、女8の計10人採用だが、男はいずれも既婚が望ましいとしている。運転免許証保持の希望もある。
応募者は、3年間の技能実習が21名女、7名男、そして1年の女3人(2名はMOUを結んだブレックレーップ大学)で肉牛等の1年職種に対応する。既婚は男が1名のみだが、女は既婚だけでなく離婚者も結構多い。
 年齢分布は、30歳代が女3名のみで、20歳代がほとんどであり、10歳代は数名である。学歴は大卒がわずかで、他は高校、中学、小学に分布する。しかし学歴による差は大きくはなく、数の計算で満点を取るものはいない。またバーベル挙げを見てもそうだが、体全体を使うのには慣れていないようだ。多くが両親の農業を学卒後助けているが、次いで縫製の雇われが男女ともに極めて多く、これに次いで雑多な仕事の雇われである。兄弟姉妹は多く、応募者と同じような仕事に従事しており、また彼らの中には日本、韓国に行っている者、また帰ってきた者が含まれる。夫婦の場合はどちらかがすでに日本にいるものが結構いる。
 面接は午後の時間をかけてじっくり聞き取り、その後、審査した5人が話し合って、夕方までに10名の採用を決めた。その後、彼らの前で、近藤氏が雇用条件、また収入などの計算やそれから差し引かれる税金や保険、家賃、また自ら調理する食費などを想定して、およその期待される手取り額等の説明を、懇切に行った。

2. 翌日の家庭訪問そして面接で合格できなかったものへの対応
 多くはプノンペンの南に展開する地域(北は隣接のタイへの出稼ぎが多い)からの応募なので、採用された者の家庭訪問は昼間の往復で可能だから、きわめて遠隔というほどではない。しかし訪問場所で3グループに分かれ、採用者の両親や兄弟に会うようにしていた。代表の近藤さんは、実習生を受け入れる事業体は面接参加が原則で、特に経営者が向こうの両親に会うのは極めて大事だとしている。今回は年度末なのでどうしても来れなかった事業体が受け入れる農家には、代表が自ら回って挨拶していた(写真)。
訪問した村では、日本から帰国した実習生が親にプレゼントした新築の家があちこちにあるのが特徴だった。
翌日、日本の技能実習からすでに帰国していた7名の男女にプノンペンに集まってもらい話を聞くことができたが、最も多いのは親への家のプレゼントであった。 平均一人3年間で300万円のお金を貯め、半分が家の建築に充てられていた。より大きな家は、兄弟姉妹で時期をずらしながら日本に行き、合算して建築費を出していた。残りは、農地やトラックの購入等だけではなく、食料販売店や食品加工などの新規商売に充てたりしていた。しかし、大卒者が多く雇われる日系企業やタイのCPの進出工場などに、幹部候補として大手企業に雇われたのが、帰国実習生の成功事例として語られていた。日本で学んだ働き方や日本語などが評価され、低学歴でも就職できたからである。また実家の農業を助ける人も多く、中には日本のメロン栽培農家で働いたので、戻った村で初めて取り組んだ例がある。虫と病気で2年間失敗し中止したという。今後は日本との条件の差を考えながら、親の農業を助けつつ、慎重に次の取り組みを考えていた女性もいた。
面接で多くの応募者が不採用になっているが、彼らは受験料を返してもらい村に戻るものの、多くが次の応募を狙っている。送り出し団体もそれを勧めており、2回目以降の採用の可能性を強調していた。カンボジアに帰国した若者のヒアリングでは、多くが1回ないし2回目の合格で日本に向かっていることを述べていた。それでも兄弟の中で何度も落ちてあきらめた事例もあるようだが、ファーマーズ協同組合は、アグリファーマーズカンボジア設立以前から長く世話になっていた送り出し団体C-Pro社の募集にも応募するように勧めている。同社は主に農業だが、農業以外の職種の募集もしているから、両方の送り出し団体を使いながら、多くが日本行きに成功するように協力している。
兄弟や知り合いの中には、残業が無制限である韓国農業の多い収入を期待した者がいたが、現地で行われる韓国語だけの試験をパスし就職を希望する仕組みとのことである。しかし試験の成績は2年間で無効になるので、この間に採用されずに結局諦める人が多いことも知られているようである。日本のように面接で採用が決まり、その後、半年、合宿所に入り日本語や日本農業の初歩を準備する方が安心だという。なお円安の影響はまだ大きくはなく、いずれもとに戻るのではないかと彼らは期待し、応募が大きく減るようにはなっていない。

3.半年の合宿とその後の展開
アグリファーマーズカンボジアが日本側の応援も得て農村に設置した合宿所は、50名近くの男女を受け入れ(写真)、日本語を集中的に学び、農業の初歩、日本の生活や法律・規則等も知ることになる。特に研修の性格を持つ日本の技能実習を成功裡に進めるため、OJT(仕事を日本人と同じようにしながら研修する)なので日本語の獲得は必須である。仕事の内容・その意義と日本人の指示説明を理解することが必要である。他国のように、現地語を知らずに、出稼ぎに来た者だけで、周年、単純労働を繰り返すのは、実習法違反である。技能実習生は各種の仕事に従事させなければならないので、そのためにも日本語のレベルアップは必要である。
しかし日本語教室で見た訪日直前の日本語クラスは、黒板等に示された会話の例がすべてひらがなで、これを使い、お互いに単語を変えながら大声で発音を繰り返していた。それでも低学歴でしかもわずか半年で習熟する日本語レベルは高くはなく、N1からN5まである日本語能力試験の最低のN5でも、訪日前にパスするのは無理なようである。訪日初期では同郷の職場の先輩の応援を得たり、日本人上司のひらがなを使っての丁寧な説明も必要である。さらにオンラインで自習することにもなる。なお日本語の試験をパスすると手当てを出すところも出てきているようで、日本語講師を呼んで学ばせるところもある。また必要な場合は、監理団体の通訳経由で、電話説明を受けることが出てくる。。
中国語の学習がほとんどない人でもすぐに受け入れる仕組みの台湾とは、日本は全く異なる。最初の受け入れは、両国とも不熟練労働力だが、働きながら日本語と技能の深化を期待するのが日本の技能実習制度であり、その成果の上に生まれたのが19年に設けられた特定技能1号である。近く日本に向かうクラスの実習生からのヒアリングでは、技能実習は1,2号では3年間だが、これにさらに3号の2年が加わることは知っていた。多くがその3~5年で帰国し、結婚や同国での仕事を行うのが、実習生の大半である。しかし特定技能にも関心を寄せる若者もいる。帰国した若者の多くがN4をパスしていたが、それは特定技能を意識していたる。
特定技能1号の人は職場のリーダーが想定され、給与も上がる。農業はまだだが、家族帯同が認められる特定技能2号の建設では1号を1年数か月で資格を取り、この春に2号になった初めての事例が出ている。これはまだあまり知られていない。しかしそうすれば、大卒の技術・人文知識・国際業務のビザで家族を帯同し、一定の年数で常住ビザを申請できるのと同じように、低学歴の若者でも大卒者と同じように日本に長く住むことが可能になる。これはすぐに情報として伝わるであろう。
合宿中の若者も、また最近帰国した若者も、訪日準備に必要な資金は30万円から40万円前後であり、それに相当する額を借り入れており、数か月で返済できることも知っている。資金の大きな部分は半年の合宿と送り出し団体の費用である。日本の場合は、往復の飛行機等は雇用者が負担し、さらには講習のための2週間は研修手当も含め、日本側の負担である。
こうした仕組みの下で、日本を目指す若者が今後も続くとみることができる。